仕事探しをはじめる前に 
 
  自分の答えを振り返りながらそれぞれの項目を読んで下さい。
 
  (1)資格さえあればやりがいのある仕事に就ける。
 「専門的な仕事がしたい」と消費生活アドバイザーの資格にチャレンジしたAさんはこう話しています。
 「学生時代にはしたことがないほど猛勉強して、やっとの思いで試験を突破しました。バラ色の資格を手に入れたのです。しかし、間もなくそれがバラ色でないことに気づきました。『仕事は常勤の仕事がいい』と思っていたのですが、非常勤の仕事しか見つかりませんでした。手に入れた資格では求めていた仕事が得られにくいと気づいたとき、今までの充実感がサーッと消えてしまいました。」
 資格を持っていると他の人では出来ない仕事ができる、というのは本当です。しかし、その仕事に就けるかというと、そうとは言えません。資格には麻薬的な一面があります。試験に合格さえすれば、バラ色の人生が広がっていると思うものです。しかし、厳しい現実はその後に訪れます。資格をとりたいのなら、その先のことをよく考えてみるのも大切です。
 
(2)能力があれば良い仕事ができる。
 
 会社に雇われるという立場での仕事は、個人の考えだけですべての物事を処理することは出来ません。それは組織で仕事を請け負っているからです。個人の知識や技量も大切ですが、それ以上に組織の中でどう立ち回れるかが重要です。組織から浮き上がっていては、良い仕事は担当させてもらえないでしょう。
 したがって、自分の能力を組織の中で発揮したいと考えるならば、他のメンバーに能力を認めさせることです。しかし、一方的に主張してはいけません。周囲の状況をみてさり気なく主張することです。
 
(3)努力すれば必ず報いられる。
 
 どうも、仕事についてはいくら努力をしても報われない場合もあるようです。しかし、努力の仕方に問題はなかったでしょうか。
 努力をする『方法』と『方向』が間違っていなかったかもう一度チェックして下さい。
 「どうせダメなのだからつまらない努力をするのはバカらしい。」と思わないでください。努力をしないで成功することなど100%考えられないことだからです。
 
(4)仕事は、やりがいや面白さや充実感がなくてはいけない。
 
 仕事に満足感を求めたり、自己実現を図ることは、確かにあっていいことです。しかし、「それが得られなけれが辞める」というのではなく、得られる努力をしていくものなのです。
 毎日の面白くない、充実感のない仕事も仕事なのです。その仕事を面白いものにするか、つまらないものにするかは、あなた自身の問題です。
 
(5)満足のいく就職先を見つけることが、何よりも大きな問題である。
 
 仕事を探している人にとっては大きな問題です。しかし、もっと重要なことは、満足のいく職業生活をどうやって続けていくかということです。完璧な仕事先などありません。
 就職はスタートです。決してゴールではありません。就職先を探すことも大きな問題ですが、就職先でどう仕事をこなしていくかの方がむしろ重要です。
 
(6)キャリアアップは職業選択の幅を広げる。
 
 欧米と日本とで違いが大きいのがこれです。米国のサクセスストーリーに登場する人々は、キャリアアップによって職業選択の幅を広げています。しかし日本では、キャリアアップすればするほど就職先が狭くなってしまうことも多いのです。
 
(7)人生は成功しなければならない。
 
 人によって考え方はさまざまだと思います。ただ、成功しない人生はあってはならない、という思い込みは非合理的なことです。自分の思ったような成功はなかなか転がり込んできません。
  オール・オア・ナッシングで物事を考えても、現実はなかなか割り切れるものではありません。人生に対する態度をもう少し柔軟にして下さい。
 
(8)能力がないというのは、その人に何の価値もないと言うことだ。
 人の価値というのは、何か特別なことができるとか、手早く処理できることなのでしょうか。人はいつも有能であり続けられるものではありません。能力=価値という思い込みにとらわれていると、いつ自分の能力のなさが露見するか、という不安が常につきまとうことになります。
 
(9)一度でも失敗をしたら取り返しがつかないものだ。
 
 完璧な人間などいるはずがありません。それに、失敗しようと思って失敗するのではないのです。大事なのは、失敗した後の処理をどうしたか、失敗から何をつかんだかです。
 悲観的な判断をする前に、本当に能力がないのか、たまたま失敗したのかを考えましょう。別の問題で解決できればいいのですから。
 
(10)職場は和気あいあいとした仲の良い雰囲気がなくてはならない。
 
 極端な話、職場はサバイバルゲームの戦場です。ライバル会社との戦い、社員同士の昇進をかけた戦いの場です。
 1日の大半を送る職場が居心地悪いところであってほしくありませんが、さりとて和気あいあいとした雰囲気を求めるというのは筋違いな話というものです。
 
(11)自分のことは自分が一番よく知っている。
 
 案外自分のことは自分が一番知らないのかもしれません。食べ物の好き嫌いなどは知っていても、自分の可能性や能力はつかみにくいものです。
 心理療法の基本は、自分のことを知ることにあります。そうすることで、心理的な問題を解決していくのです。自分はこうだ、と簡単に決めつけず、何事もチャレンジしていく姿勢が重要です。
 
(12)自分が大切だと思っていることは、人もそう思っている。
 
 職場では、自分が大切だと思っていても、相手がそう思わないこともあります。自分勝手な思い込みにとらわれないようにしましょう。職場でのコミュニケーションのずれは、案外こんなとこからはじまってしまうものです。
 
(13)人から嫌われる人間になってはならない。
 
 冷静に考えてみましょう。すべての人に好かれようとしても、それは土台無理な話ではないでしょうか。「百人の職場なら、そのうち二十人の人とうまくやれればいい。残り八十人の人には好かれなくてもいい」というくらいに考え方を変えていった方がいいでしょう。
 
(14)感情はどうしようもないものだ。コントロールはできない。
 
 感情をコントロールするのはそれほど難しくありません。この思い込みを変えるだけで、案外たやすくコントロールできます。理性的に振る舞えばいいのです。嫌いなものを好きになれと言うのではありません。好きになれないものは好きになれない。だからこそ、冷静に、理性的に、振る舞うことを心がけて下さい。
 
(15)どんなことがあろうと、人を傷つけることは絶対してはいけない。
 
 これは正しいと言う人も多いと思います。しかし、実は非合理的な思い込みです。
 自分が人を傷つけるつもりがなくても、傷つけてしまうことがあります。それに気づいたとき、しかるべき行動をとることが大切なのです。